石けんの歴史石けんの製造方法各製造方法による特徴総脂肪物質 (TFM)市販のよい石鹸の選び方(旧 ひよこノート)
※1脂肪酸に※2アルカリを加えて化学反応させてできた※3界面活性剤のことです。
脂肪酸 + 水酸化ナトリウム = 脂肪酸ナトリュウム(固形石鹸)
脂肪酸 + 水酸化カリュウム = 脂肪酸カリュウム(液体石鹸)
脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウム以外の、界面活性剤は※4合成界面活性剤です。
石鹸は動物性脂肪または植物油と苛性ソーダとの組み合わせです。
石鹸は水に溶けると、表面から汚れをはく離させます。
古くから石鹸は洗浄のためや皮膚のただれを治したり、髪を染めたりまた、膏薬や皮膚軟膏として用いられてきました。
しかし、現代では一般に洗浄剤や香料として使用します。
石鹸の正確な起源は不明ですが、ローマの出典によれば少なくとも紀元前600年に遡り、当時、フェニキア人が山羊の獣脂と木灰から石鹸を調合していました。
石鹸はまた、イギリスの古代の住人であるケルト人によっても作られていました。
石鹸は主に薬剤としてローマ帝国全域で広く使用されました。
洗剤としての石鹸への言及は、紀元2世紀まで現れません。
石鹸は、8世紀までにはフランス、イタリアおよびスペインで普及していましたが、ヨーロッパの残りの地域では、はるか後の17世紀まで滅多に使用されませんでした。
石鹸製造は12世紀の終わりごろにイギリスで始まりました。
石鹸製造者は生産するすべての石鹸に重い税金を払わなければなりませんでした。
収税吏は就業時間後の違法な石鹸製造を取り締まるために毎晩、石鹸製造鍋の蓋に鍵をかけました。
税金が高いため、石鹸は贅沢品であり、1853年に税金が廃止されるまで、イギリスでは一般的には使用されませんでした。
19世紀には石鹸はヨーロッパ全土で手頃な価格で普及しました。
初期の石鹸製造者は単に木灰と動物性脂肪の溶液を沸騰させていました。
泡状の物質は深鍋の上部に生じました。
それは、冷やすと固まって石鹸になりました。
1790年ごろ、フランスの石鹸製造者ニコラス・ルブラン(Nicolas Leblanc)は、一般的な食卓塩(塩化ナトリウム)から苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を抽出する方法を開発し、石鹸の木灰成分から切り替えました。
フランスの化学者ユージン-ミッシェル・シュブルール(Eugene-Michel Chevreul)は1823年に(英語で鹸化と呼ばれる)石鹸形成プロセスを具体的な化学用語で表しました。
鹸化において、化学的に中性である動物性脂肪は、脂肪酸に分割され、これがアルカリ炭酸塩と反応して石鹸を形成し、副産物としてグリセリンを残します。
石鹸は、19世紀末までには工業プロセスで製造されていましたが、アメリカ西部の開拓者などの田舎地域の人々は、家で石鹸を作り続けました。
石けんの製造には小規模生産者や石鹸愛好家が作るバッチプロセス法、また大規模な工業生産の連続法などがあります。
日本で販売されている大半の石けんは、輸入された連続法の石けん素地(ソープヌードル、ソープチップ)に保湿剤や香料などを混ぜて製品にします。
ヨーロッパでは石鹸の歴史は古く、伝統的な製法のアレッポ石鹸やキャスティール石鹸、マルセイユ石鹸など、欧米ではバッチプロセスが人気が高い。
出来上がった石けんに保湿成分であるグリセリンが残るのはコールドプロセスとセミボイルドプロセス(炊き込み法)です。
これらの製法は簡単な方法なので、小さな規模の石鹸職人や石鹸愛好家によって、手作りの装飾的な石鹸が作られます。
ほとんどの石鹸メーカーはコールドプロセス法を好んで続けています。
バッチプロセスはシンプルな製法なので世界中の小規模石鹸工場で採用されています。
コールドプロセス製法では余分な水酸化物や多くの未反応の脂肪が含まれないように、鹸化チャートを使用してアルカリと油脂との比率を計算して正確な測定が必要です。
それはホットプロセスにも使用されるべきですが、フルボイルドホットプロセスには必要はありません。
歴史的に灰汁は雨水と灰から作られました。
石けん製造業者はそれに卵が浮くと灰汁液の準備ができたとみなしていました。
この手製の灰汁作りは予測不可能なもので、結局1800年代初期にイギリスの化学者サー・ハンフリー・デービー(Sir Humphry Davy)によって水酸化ナトリウムの発見につながりました。
油脂にアルカリを加え、塩析をしないで仕上げる。鹸化反応をほぼ室内で行います。
「コールドプロセス」の手作り石鹸は工業的に作られた石鹸とは異なり、油分を残します。それは石鹸にアルカリ成分を残さないためです。
この余分な油脂はオーバーファット=過脂肪とよびます。
過脂肪の石鹸はそうでないものより肌にとっては優しい物になりまが、多すぎると肌は「脂っぽい」と感じます。
そして、グリセリンは保湿剤として残ります。 しかし、グリセリンは水分を引き寄せるため「ドロドロ」とした状態になり石鹸を柔らかくします。
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油脂にアルカリを加えて加熱をし、塩析をしないで仕上げる。鹸化反応は沸点近くで行われます。
この製法にはいくつかの方法があります。最も一般的なものはDHP(ダブルボイラープロセス)とCPHP(クロックポット ホットプロセス)です。
反応速度を上げるために加熱して、鹸化反応を促進し生産します。
コールドプロセス石けんとは対照的にホットプロセスでは油脂を完全に鹸化してから型に注ぎます。
「ホットプロセス」もグリセリンが残りますが、高温で行うので、石鹸を型に入れる前に釜のなかで鹸化が終わります。
水酸化物と油脂を沸点の少し下の80-100度で鹸化が完了するまで一緒に加熱および混合します。
現代の化学機器になる以前には石けん製造者はテイスティング(水酸化物の鋭い独特の味が、鹸化された後はなくなります)または、目視で判断していました。
経験豊かな目には、ゲル段階と完全な鹸化がいつ生じたかわかります。
初心者は、研究と講習によってこの情報を見つけることができます。
しかし容易さのために石けんをティスティング(舐めて確かめる)することは、鹸化が不十分だと腐食性の高いナトリウムと水酸化カリウムがあり推奨しません。
ホホバオイルやシアバターなどのエモリエント効果のあるオイルは最初の油が鹸化し、できた石鹸中で反応を起こしていない状態になった後に添加されることもあります。
油脂にアルカリを加え加熱をして塩析し、何度も沸騰させて鹸化反応させグリセリンを回収します。
フルボイルドホットプロセスの利点は、鹸化に必要な正確なアルカリ量が分からなくても良い事です。
この方法は、水酸化アルカリの純度が信頼できなかった頃に始まりました。
この方法では、木灰やカリ堆積物などの、天然に発見されるアルカリを使用することもできるからです。
フルボイルドホットプロセスでは、油脂とアルカリの混合物は実際に沸騰させます(100度以上)
鹸化が生じたあと、塩化ナトリウムを添加することによって溶液から「ニートソープ」を沈殿させ、余分な液体を排出させます。
この余分な液体は、脂肪中の不純物と有色化合物の多くを一緒に運び去り、より純度が高く白い石鹸を残すとともに、すべてのグリセリンを除去します。
次に、熱くて柔らかい石けんをポンプで型に注入します。
消費された水酸化物溶液は、グリセリンの回収のために処理されます。
油脂にアルカリを加え加熱をして塩析し、何度も沸騰させて鹸化反応させてグリセリンを回収します。
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油脂を脂肪酸とグリセリンに分離し、脂肪酸にアルカリを加えて塩析しないで作る。
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グリセリンは、石鹸製造の非常に有用な副産物です。
これは、ハンドローション、薬品、およびダイナマイトなどの爆発物の主成分であるニトログリセリンを製造するために使用されます。
油脂にメチルアルコールを反応させ、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルをつくり、これをアルカリで鹸化する。
※1中和法 / 大、中規模 | 鹸化塩析法 / 中、小規模 | ホットプロセス製法(焚き込み法) / 小規模、家庭向き | コールドプロセス製法(冷製法 )/ 小規模、家庭向き | |
長所 | 短時間で大量生産できる | 純度が高い | グリセリンや不鹸化物が残る | グリセリンや不鹸化物が残る |
短所 | グリセリンや※2不鹸化物がなく、鹸化塩析法より変質しやすい | グリセリンや不鹸化物がほとんどない | 加熱による油脂の劣化が早く、変質しやすい | ※5溶けくずれしやすい |
使用感 | さっぱり | さっぱり | しっとり | しっとり |
製造期間 | 4~5時間 | 10日前後 | 5日前後 | 1~2ヶ月 |
製品 | 市販の石けんの大半 | 市販の無添加石けん | 液体石けん・廃油石鹸 | 手作り石鹸 |
備考 | 保湿効果を謳っているものは※3石鹸素地にグリセリンや香料を足している | ※4塩析を繰り返すことで石けん成分が95%以上の純石鹸ができる。しかし、純度が高いほどグリセリンなどの保湿成分はなくなる | 水酸化カリウム(苛性カリ)で作る石鹸は液状になり塩析ができません。液体石鹸はこの方法で作ることが多い | 市販品にはない高級オイルを使うことができる。また肌の潤いや保護効果を高めるために※6オーバーファットに作ることができる |
総脂肪物質 TFM(Total fatty matter)
TFM(総脂肪物質)は、石けんの品質を記述する最も重要な特性の一つであり、商取引において常に指定されています。
TFMは、鉱酸(通常は塩酸)で分解した後にサンプルから分離することができる脂肪物質の総量(大部分は脂肪酸)として定義されます。
石けんの中に最も一般的に存在する脂肪酸は、オレイン酸、ステアリン酸およびパルミチン酸であり、純粋な乾燥したオレイン酸ナトリウムはTFM 92.8%ですが、中小規模の工場でソープタブレットを製造するために現在ますます使用されている最高品質のソープヌードルは、一般にTFM最低78%、水分最大14%の仕様で売買されています。
しかし、完成品の市販石けん、とりわけ洗たく石けんには、水分のほかに、コストを下げたり、特別な属性を与えたりするために使用される充填剤や、エモリエント、防腐剤などが含まれているため、TFMは50%ほどの低さであることもあります。
また、ふつう乾燥粉末である充填剤は、石けんをいっそう堅く、肌に対していっそう荒くし、水中で「どろどろ」にさせる傾向も強いため、低TFMは一般に堅さと低品質に結びつきます。
昔のヨーロッパおよび現在のいくつかの国では、TFM最低75%の石けんはGrade 1、最低65%はGrade 2、60%未満はgrade 3と呼ばれましたが、現在60%超76%未満はgrade1です。